はじめに
意外に思われるかも知れないが、Linux を使って絵を描くことは難しくない。 筆者は Linux を普段使いしており、Linux で Krita (クロスプラットフォームのペイントソフト。後述) を用いて絵を描いている。 例えば、タイトル画像の絵も筆者が Linux 上で描いたものである。 本記事では Linux で絵を描く際の環境構築、並びに実際に絵を描いてみての所感を記述する。
- Linux を普段使いしているが、どうやって絵を描いたらいいか分からない
- ペイントソフトに金を払わず安価でお絵描き環境を構築したい
- CLIP STUDIO PAINT が使えない OS でどうやって絵をお描きになるのですか?
という風に考えている方は是非本記事を読み、Linux での創作活動を楽しんで頂きたい。
環境構築
PC とペンタブレット
まず、必要なデバイスについて説明する。
- Linux を入れる PC
- ペンタブレット
の 2 つがあれば、絵を描くには十分である。以下、それぞれについて説明する。
1. Linux を入れる PC
ディストリビューション選びやインストールの方法については割愛するので、各自調べて欲しい。
PC の性能はそこまで高くなくてもよく、ラップトップで十分快適に作業を行うことが出来る。 目安として、筆者が普段使っている PC のスペックや価格を以下に示す:
- 機種: Lenovo ThinkPad E14 Gen 3 (AMD)
- OS: Void Linux
- CPU: Ryzen 5 5500U
- GPU: Radeon Graphics
- メモリ: 12GB1
- 価格: 約 6.5 万円2
注意することとして、PC の液晶に TN 液晶を選ぶべきではない3。多少価格が高くなっても、IPS 液晶のものを選択するべきである。
2. ペンタブレット
ペンタブレットは絵を描く際に用いる入力機器であり、大きく
- 板タブレット (以下、板タブ)
- 液晶タブレット (以下、液タブ)
の 2 つに区分される。この 2 つを比較した際、板タブのメリットとしては
- 安い
- 持ち運びやすく外での作業に適している
- 比較的場所をとらない
などがある。 一方、液タブは板タブと比較して高価で嵩張るものの、
- 手元を見ながらアナログに近い感覚で絵を描ける
という非常に大きなメリットがある。
それぞれの長所を踏まえた上で、あくまで本記事においては「価格や持ち運びやすさに優れ、気軽に導入出来る」という点で板タブをおすすめしたい4。また、大体の Linux ディストリビューションで Wacom デバイス用のドライバが標準搭載されているため、メーカーにこだわりがなければ Wacom 製のタブレットを購入することを勧める。
ペンタブレットの入手については、メルカリを始めとしたフリマアプリを使うと安価で購入することが出来る。「ほぼ新品」「数回使っただけ」の商品がよく出回っている5ため、品質についてもあまり心配する必要はない。例えば、筆者はメルカリでほぼ新品の板タブ (Wacom Intuos Medium CTL-6100) を 8,450 円6で購入することが出来た。
ソフトウェア: Krita
次に、絵を描くためのソフトウェアについて説明する。Linux では、残念ながら
- CLIP STUDIO PAINT
- Procreate
- ibisPaint
- MediBang Paint
といった有名なペイントソフトは使用出来ない。その代わりとして、本記事では「Krita」というペイントソフトを紹介する。
Krita はオープンソースのペイントソフトであり、Linux だけではなく Windows や macOS でも動作するクロスプラットフォームソフトウェアである。上記したような有名なペイントソフトと異なり完全に無料でありながら、それらと遜色ない程豊富な機能を持つ。
インストールに関しては、apt や dnf など多くのパッケージマネージャに対応している。また、flatpak でインストールすることも可能である。
使い方については、UI やショートカットが独特であるため多少の慣れが必要である。簡単な使い方は https://esinote.com/guide/knowledge/krita を参考にするとよい。
実際に描いてみて
高度なことをしていないだけかも知れないが、今のところ特に不自由を感じることもなく作業出来ている。Krita については特にデフォルトのブラシが優秀で、鉛筆、エアブラシ、水彩や G ペンなど自分が欲しいブラシは大抵存在した。また、カラーバランスの調整やフィルターなどの標準的な画像編集機能がある点も評価出来る。それなりのラップトップと板タブに無料ソフトを入れるだけで手に入る環境としては十分過ぎるほどであり、今後の作品制作にも十分なパフォーマンスを発揮すると期待出来る。
ただし、Linux を普段使いした上で Krita で絵を描く場合、
- 標準的な環境ではないため、特に商業レベルの制作ではサポートされにくい
- 文献の多くが英語であるため、慣れていないと大変
- 企業のサポートが受けられないため、トラブルは自分で調べて解決しなければならない
といった苦労もある。ユーザーコミュニティや親切なサポートを含めた総合的な使いやすさを重視する場合は、CLIP STUDIO PAINT を始めとした人気ペイントソフトを使う方がよいだろう。
最後に
Krita に関してもっとよく知りたい場合は、ドキュメント(https://docs.krita.org/ja)を参照のこと。